高校教科書における竹島=独島の扱い

半月城

1.教科書検定について

 

 高校用社会科の教科書は、下記のように地理歴史分野と公民分野に大別される。

 

公民分野:     現代社会、倫理、政治経済

地理歴史分野:地理A、地理B、地図、日本史A、日本史B、世界史A、世界史B

                              A教科は2単位、B教科は4単位)

 

 検定は低学年向け教科書が2001年度と2005年度に行なわれた。年度とは、その年の4月に始まり、翌年の3月に終る。中学年向けの検定は2002年度と2006年度に行なわれた。社会科の場合、低学年と中学年の区別はほとんどない。検定に合格した教科書は翌年度に各地で採択の決定が行なわれ、実際に使用されるのは、検定の翌々年度以降である。

 

 

 

2001

02

03

04

05

06

07

08

09年度

低学年

検定

0

 

 

 

0

 

 

 

 

採択

 

0

 

 

 

0

 

 

 

使用開始

 

 

0

 

 

 

0

 

 

中学年

検定

 

0

 

 

 

0

 

 

 

採択

 

 

0

 

 

 

0

 

 

使用開始

 

 

 

0

 

 

 

0

 

 

 

2001

02

03

04

05

06

07

08

09年度

 

 

 教科書で領土問題をどのように扱うかは2005年度の検定で方向が大きく変わった。その結果は20063月に公表されたが、「領土」が厳格に取り扱われたのが特徴である。その様子を読売新聞は下記のように報道した。

 

「領土」厳格化鮮明に(読売新聞2006.3.30

政治・経済と現代社会の現行(2005年度)の教科書で、竹島と尖閣諸島を取り上げているのは8点だったが、今回検定に合格した教科書は14点と、2倍近くに増えた。竹島を取り上げた個所は計35個所、尖閣諸島は計33個所で、このうちそれぞれ2022個所で意見が付いた。

 現代社会では、現行(2005年度)と同じ記述なのに修正を求められた教科書もあった。竹島の説明で「韓国との間で交渉中」・・・・と、現行通りの記述で申請したが、「我が国の領土であることが理解し難い」と意見が付き、竹島は「島根県に属し・・・韓国も領有権を主張」、・・・と修正した。

 

記事の対象になった教科書は、数研出版株式会社 「改訂版 高等学校 現代社会」であるが、領土問題に関する限り、前回と同じ内容では検定に通らなかったのである。文部科学省は竹島=独島を日本の領土として明記させる方針を示したのである。

この方針は教科書会社に充分浸透したのか、2006年度の検定で「竹島」の記述で検定意見が付されたのは、東京書籍「政治・経済」の1点のみであった。この申請本は「竹島」の記述を2002年度検定教科書と同じにしたが、やはり「尖閣諸島、竹島が我が国の領土であることが理解し難い表現である」との検定意見が付され表現を変更したのである。

こうした厳格な検定により、教科書で竹島=独島を日本領として明確に記述した教科書が大幅に増えた。その詳細を以下に示すが、竹島=独島を日本領に記述した教科書は会社名を下線で強調した。高校教科書が竹島=独島をいかに記述したか、その集計表を添付する。2005年度以降の検定教科書では83%の教科書が竹島=独島を日本領と明記した。

なお、現代社会や政治経済の教科書は地理の教科書と違って、必ずしも竹島=独島を記述する必要がないのであるが、これを考慮すると、2005年度以降の検定教科書で竹島=独島を記述した教科書は36種類あり、そのうちの35種類が竹島=独島を日本領と明記したのである。その割合は97%にのぼる。文部科学省が竹島=独島を日本領と明記する方針はほぼ達成されている状況である。

 

 

 

2.各社の教科書における竹島=独島の記述

地理A

 市販されている「地理A」の教科書は6社、8種類である。このうち、2004年以前に検定を受けたのは、2種類のみで、他は2005年以降の検定である。

 

 

 

「地理A」

2単位

 

2008年度

 

順位

社名

教科書名

検定
年月

採択
冊数

占有率
(%)

竹島=独島

日本領

日本領
冊数比率(%)

1

帝国書院

高等学校 新地理A 初訂版

2007.3

159,759

35.8

35.8

2

第一学習

高等学校 改訂版 地理A

2006.3

88,429

19.8

19.8

3

東京書籍

地理A

2006.3

63,623

14.2

14.2

4

帝国書院

高校生の地理A 最新版

2006.3

48,863

10.9

10.9

5

二宮書店

よくわかる地理A

2006.3

43,691

9.8

9.8

6

教育出版

新地理A

2006.3

18,118

4.1

4.1

7

二宮書店

高校生の新地理A

2002.3

18,113

4.1

0

8

清水書院

高等学校 現代地理A

2002.3

6,185

1.4

1.4

 

合計

 

 

446,781

100

 

98.6

 

占有率

1.帝国(47%)2.第一(20%)3.東書(14%)

 

 

 

 

 

7種類/8、日本領

 

 

 

 

 

 

 

冊数比率 99%

 

 

 

 

 

 

1.東京書籍株式会社 「地理A2006.3月検定、2008.1月発行。

 P13  地図「排他的経済水域」にて「竹島」を日本領とする。

 P142,地図「韓国の地勢図」にて「竹島」を日本領とする。

 巻末地図「日本の行政区分」にて「竹島」を日本領とする。

 

2.教育出版株式会社 「新地理A 暮らしと環境」2006.3月検定、2008.1月発行。

 P13   本文に「日本にも固有の領土である、北方領土(歯舞諸島、色丹、国後、択捉の島々)や竹島の問題がある」と記す。

 

3.株式会社 清水書院 「高等学校 現代地理A2002.3月検定、2008.2月第6版発行

 P21  本文に「また、島根県に属する竹島には、韓国との領有権問題がある」と記す。

 

4.株式会社帝国書院 「高等学校 新地理A 初訂版」2007.3月検定、2008.1月発行

 P17,コラム「日本の領土問題」にて「また、島根県に帰属する日本海の竹島では、領有権をめぐり韓国との間で主張が対立している」と記す。

 

4.同上「世界を学ぶ 高校生の地理A 最新版」2006.3月検定、2008.1月発行。

 P14,コラム「旅先から」にて「同様に日本固有の領土の、竹島で韓国との間に領有権問題があり、尖閣諸島については中国が領有権を主張している」と記す。

 

5.株式会社 二宮書店 「よくわかる地理A 世界の現状と未来」2006.3月検定、

2008.1月初版第2刷発行。

 P16   地図「日本の領域」にて「竹島」を日本領と明記し、説明文に「竹島は韓国との間に領有権問題があり、尖閣諸島は中国が領有権を主張している」と記す。

 

5.同上「高校生の新地理A 2002.3月検定、2008.1月初版第6刷発行。記述なし。

6.株式会社第一学習社 「高等学校 改訂版 地理A 世界の暮らしを学ぶ」2006.3月検定、2008.2月発行。

 P17,地図「日本の領域と経済水域」にて「竹島」を日本領と明記し、説明文に「しかし、韓国とは竹島の帰属問題があり、また中国は尖閣諸島の領有権を主張しているため、これらの海域は暫定水域となっている」と記す。

 

 

 

地理B

 地理Bの教科書は4社、7種類がある。この中で2004年以前に検定されたのは2社、2種類であるが、いずれも竹島=独島を日本領として明確には記述していない。2005年以降に検定された5種類の教科書は、いずれも「竹島」を日本領として明確に記述している。

 

 

 

地理B」

4単位

 

2008年度

 

順位

社名

教科書名

検定
年月

採択
冊数

占有率
(%)

竹島=独島

日本領

日本領
冊数比率(%)

1

帝国書院

新詳 地理B 初訂版

2006.3

154,925

60.7

60.7

2

二宮書店

詳解 地理B

2006.3

30,656

12

12

3

東京書籍

地理B

2007.3

24,213

9.5

9.5

4

帝国書院

高等学校 世界地理B

2007.3

19,255

7.5

7.5

5

教育出版

新地理B

2006.3

13,341

5.2

5.2

6

二宮書店

詳説 新地理B

2002.3

9,073

3.6

0

7

教育出版

地理B

2002.3

3,584

1.4

0

 

合計

 

 

255,047

100

 

95

 

占有率

1.帝国(68%)2.二宮(16%)3.東書(10%)

 

 

 

 

 

5種類/8、日本領

 

 

 

 

 

 

 

冊数比率:95%

 

 

 

 

 

 

1.東京書籍株式会社 「地理B」2007.3月検定、2008.1月発行

 巻頭地図「日本の行政区分」に「竹島(島根県)」と明示する。

 P256,地図「朝鮮半島の地勢図と断面図」に「竹島」を日本領として明記する。

 

2.教育出版株式会社 「新地理B 世界をみつめる」2006.3月検定、2008.1月発行

 P231,地図「日本と中国・韓国・ロシアの位置関係と基礎データ」にて竹島=独島を日本領とするが、「竹島」名は明記せず。

 P277,地図「日本の北方領土」の説明文に「その他日本固有の領土である竹島については、韓国との間に領土問題がある」

2.同上「地理B 世界をみつめる」2002.3月検定、2003.1月発行。

 P277,地図「日本の北方領土」の説明文にて「その他領土問題では、韓国との間に竹島をめぐる問題がある」と記す。

 

3.株式会社帝国書院 「高等学校 世界地理B」2007.3月検定、2008.1月発行。

 167,地図「朝鮮半島とその周辺の自然環境」にて竹島=独島を日本領とするが、「竹島」名はない。

 223,コラム「日本の領土・領海問題」にて「このほか、日本固有の領土である竹島については、韓国との間に領有権問題がある」

3.同上「新詳地理B 初訂版」2006.3月検定、2007.1月発行

 P320,欄外の注にて「日本の固有領土である竹島でも、韓国との間に領有権問題がある」と記す。

 

4.株式会社 二宮書店 「詳解地理B2006.3月検定、2008.1.発行

 P8       地図「東シナ海と尖閣諸島」にて「竹島」名を明記して日本領とする。

 P253,本文「さらに、両国間には竹島領有権問題もある」。

欄外に注として「竹島(韓国名では独島)は、日本海に浮かぶ無人島であるが、排他的経済水域の設定で重要な役割を果す」。

 P301,地図「日本の国家領域」にて「竹島」名を明記して日本領とし、説明文に「竹島は韓国との間に領有権問題があり、尖閣諸島は中国が領有権を主張している」と記す。

4.同上 「詳説新地理B2002.3月検定、2008.1月初版第6刷発行。

P263,本文にて「日韓両国には、竹島領有権問題(*)など課題もあるが、そうした課題を解決するためには、これらのような経済協力や文化交流を通じた相互理解が欠かせない」と記す。

(*)「竹島(韓国名では独島)は、日本海に浮かぶ無人島であるが、排他的経済水域の設定で重要な役割を果す。帰属について、両国の間で意見の一致はみられていない」

 P316,地図「日本の国家領域」にて「竹島」を「係争地区」として記し、説明文に「竹島は韓国との間に領有権問題があり、尖閣諸島は中国が領有権を主張している」と記す。日本領と断定していない。

 

 

 

地図

「地図」は最新の情報を網羅する必要があるため、現行の教科書はすべて2005年以降に検定されたものが使用されており、3社、8種類ある。すべての教科書は「竹島」を日本領と明記している。

 

 

 

「地図」

 

 

2008年度

 

順位

社名

教科書名

検定
年月

採択
冊数

占有率
(%)

竹島=独島

日本領

日本領
冊数比率(%)

1

帝国書院

新詳高等地図 初訂版

2006.3

420,259

53.6

53.6

2

帝国書院

標準高等地図 初訂版

2007.3

107,967

13.8

13.8

3

帝国書院

地歴高等地図 最新版

2006.3

91,568

11.7

11.7

4

二宮書店

基本地図帳 改訂版

2006.3

51,866

6.6

6.6

5

二宮書店

詳解現代地図

2006.3

33,998

4.3

4.3

6

二宮書店

高等地図帳 改訂版

2007.3

33,864

4.3

4.3

7

東京書籍

新高等地図

2006.3

33,858

4.3

4.3

8

二宮書店

コンパクト地図帳

2007.3

10,664

1.4

1.4

 

合計

 

 

784,044

100

 

100

 

占有率

1.帝国(79%)2.二宮(17%)3.東書(4%)

 

 

 

 

 

8種類全部、日本領

 

 

 

 

 

 

 

冊数比率 100%

 

 

 

 

 

 

1.東京書籍株式会社 「新高等地図」2006.3月検定、2007.2月発行。

2.株式会社帝国書院 「標準高等地図」2007.3月検定、2008.1月発行。

2.同上「地歴高等地図」2006.3月検定、2007.1月発行。

2’’.同上「新詳高等地図」2006.3月検定、2007.1月発行。

3.株式会社 二宮書店 「コンパクト地図帳」2007.3月検定、2008.1月発行。

3.同上「基本地図帳 改訂版」2006.3月検定、2007.1月発行。

3’’.同上「詳解現代地図」2006.3月検定、2007.1月発行。

3’’’.同上「高等地図帳 改訂版」2007.3月検定、2008.2月発行。

 

 

 

現代社会

 全17種類の教科書が使用されており、その中で2004年以前の検定本は5種類でいずれも竹島=独島を記述しないか、あるいは記述しても日本領と明記されていない。一方、2005年以降の教科書では12種類の中で8種類が竹島=独島を日本領と明記し、3種類は竹島=独島にふれていない。残り1種類は山川出版の教科書であるが、竹島=独島にふれながらも日本領として記述されなかったのは特異な存在である。

 

 

 

「現代社会」

 

 

2008年度教科書


社名

教科書名

検定
年月

採択
冊数

占有率
(%)

日本領

日本領

冊数
比率(%)

1

東京書籍

現代社会

2006

329,157

29.2

29.2

2

第一学習

高等学校 改訂版 現代社会

2006

152,414

13.5

13.5

3

実教出版

新版 現代社会

2006

119,030

10.6

 

4

第一学習

高等学校 改訂版 新現代社会

2006

118,187

10.5

10.5

5

実教出版

高校 現代社会 新訂版

2006

95,121

8.4

 

6

数研出版

改訂版 高等学校 現代社会

2006

63,505

5.6

5.6

7

清水書院

高等学校 新現代社会 改訂版

2006

61,101

5.4

5.4

8

帝国書院

高校生の新現代社会 初訂版

2006

50,968

4.5

 

9

教育出版

新現代社会

2006

27,960

2.5

2.5

10

清水書院

新現代社会

2002

25,530

2.3

 

11

清水書院

高等学校 現代社会 改訂版

2007

21,333

1.9

1.9

12

一橋出版

高校現代社会

2002

16,635

1.5

 

13

三省堂

現代社会 改訂版

2006

12,898

1.1

 

14

山川出版

東学版 現代社会

2002

11,690

1

 

15

山川出版

新版 現代社会

2006

10,550

0.9

 

16

数研出版

現代社会

2002

7,686

0.7

 

17

桐原書店

新現代社会 改訂版

2006

2,730

0.2

0.2

 

合計

 

 

1,126,495

100

 

68.8

 

占有率

1.東書(29%)2.第一(24%)3.実教(19%)

 

 

 

 

 

 

 

8種類/17、日本領

 

 

 

 

 

 

 

冊数比率:69%

 

 

 

 

 

 

1.東京書籍株式会社 「現代社会」2006.3月検定、2007.2月発行

P155,本文にて「さらに、日本の領土については、ロシアとの間で北方領土問題、韓国との間で竹島の問題があり、尖閣諸島については中国がその領有を主張している」と記す。

 

2.実教出版株式会社 「高校現代社会 新訂版」2006.3月検定、2008.2月発行。

記述なし。

2.同上「新版現代社会」2006.3月検定、2008.1月発行。

記述なし。

 

3.株式会社 三省堂 「現代社会 改訂版」2006.3月検定、2008.3月再版発行。

記述なし。

 

4.教育出版株式会社 「新現代社会」2006.3月検定[1]2008.1月発行。

 P138,欄外の注にて「日本の領土である北方領土と竹島は、それぞれロシアと韓国に占領され、領土問題となっている」と記す。

 

5.株式会社 清水書院 「高等学校 新現代社会 改訂版」2006.3月検定、2008.2月再版発行。

 P121,コラムにて「他に、日本の固有領土に関わって、竹島(韓国名では独島)について韓国が、魚釣島など尖閣諸島については中国・台湾が、領有を主張している」と記す。

5.同上「高等学校 現代社会 改訂版」2007.3月検定、2008.2月発行。

 P152,欄外の注にて「また、島根県に属する竹島には、韓国との領有権問題がある」と記す。

5’’.同上「新現代社会」2002.3月検定、2008.2月第6版発行。記述なし。

 

6.株式会社帝国書院 「高校生の新現代社会」2006.3月検定、2008.1月発行。

記述なし。

7.株式会社 山川出版社 「新版 現代社会」2006.3月検定[2]2008.3月発行。

 P153,欄外の注にて「竹島についても韓国との間に領土問題がある」と記す。

7.同上「東学版 現代社会」2002.3月検定、2008.3月発行。記述なし。

 

8.数研出版株式会社 「改訂版 高等学校 現代社会」2006.3月検定[3]2008.1月発行。

 P160,コラムにて「竹島は島根県の隠岐島の西方159km、韓国の鬱陵島の東南92kmにある大小二つの岩礁の島。島根県に属し、総面積は0.23km2。韓国も領有権を主張している」と記す。

8.同上「現代社会」2002.3月検定、2008.1月発行

 P131,本文にて「日本にも、北方領土(・・・)をめぐってロシアと、竹島(島根県沖)をめぐって韓国と未解決の領土問題がある」と記す。

 

9.一橋出版株式会社 「高校現代社会」2002.3月検定、2008.1月発行。

 P149,コラムにて「竹島問題 日本と韓国とのあいだで、竹島問題がある」と記す。

10.株式会社第一学習社 「高等学校 改訂版 新現代社会」2006.3月検定、

2008.2月発行。

 P147,地図「日本の領域」にて「竹島」を日本領と明記し、その説明文にて「日本の領土である竹島には、韓国によってコンクリート製の国旗のほか、灯台や見張台が築かれている」と記す。韓国国旗の写真を掲載する。

10.同上「高等学校 改訂版 現代社会」2006.3月検定、2008.2月発行。

 P209,地図「日本の位置」にて「竹島」を日本領と明記し、本文にて「また、韓国が不法占拠を続けている竹島(韓国での呼称は独島)や、中国が領有権を主張している尖閣諸島(中国での呼称は釣魚島)も日本固有の領土であるが、双方の主張は平行線をたどっている」と記す。

 

11.株式会社 桐原書店 「新現代社会 改訂版」2006.3月検定、2008.2月発行。

 P153,本文にて「日本の領土に関しても、ロシアとの北方領土返還問題が未解決なほか、韓国が竹島の領有権を、中国が尖閣諸島の領有権をそれぞれ主張している」と記す。

 

 

 

政治・経済

 全16種類の中で2004年以前の検定教科書は6種類であり、いずれも竹島=独島にふれていないか、ふれても日本領と明記されていない。一方、2005年以降の教科書は11種類であるが、その中で8種類が竹島=独島を日本領と明記している。残りの3種類は竹島=独島にふれていない。

 

 

 

「政治経済」

 

 

2008年度教科書


社名

教科書名

検定
年月

採択
冊数

占有率
(%)

日本領

日本領

冊数
比率(%)

1

東京書籍

政治・経済

2007.3

65,747

14.8

14.8

2

実教出版

高校 政治・経済 新訂版

2007.3

64,272

14.4

0

3

第一学習

高等学校 改訂版 政治・経済

2006.3

53,965

12.1

12.1

4

数研出版

改訂版 高等学校 政治・経済

2006.3

43,666

9.8

9.8

5

清水書院

高等学校 現代政治・経済 改訂版

2007.3

37,145

8.3

8.3

6

第一学習

高等学校 改訂版 新政治・経済

2007.3

35,353

7.9

7.9

7

実教出版

新版 政治・経済

2006.3

33,314

7.5

0

8

清水書院

高等学校 新政治・経済 改訂版

2006.3

32,149

7.2

7.2

9

東京書籍

政治・経済

2003.3

14,922

3.3

0

10

実教出版

政治・経済

2002.3

12,687

2.8

0

11

教育出版

政治・経済

2003.3

12,498

2.8

0

12

一橋

政治・経済

2002.3

9,914

2.2

0

13

桐原書店

新政治経済 改訂版

2006.3

8,687

1.9

1.9

14

山川出版

詳説 政治・経済

2006.3

7,706

1.7

1.7

15

数研出版

政治・経済

2003.3

5,794

1.3

0

16

三省堂

政治・経済

2003.3

4,913

1.1

0

17

山川出版

東学版 政治・経済

2003.3

2,837

0.6

0

 

合計

 

 

445,569

100

 

63.7

 

占有率

1.実教(25%)2.第一(20%)3.東書(18%)

 

 

 

 

 

 

 

8種類/17,日本領

 

 

 

 

 

 

 

冊数比率:64%

 

 

 

 

 

 

1.東京書籍株式会社 「政治・経済」2007.3月検定[4]2008.1月発行。

 P94,本文にて「しかし、日本の領土については、ロシアとは北方領土、韓国とは竹島をめぐる問題があり、中国は尖閣諸島の領有を主張している」と記す。

1.同上「政治・経済」2003.3月検定、2007.2月発行。

 P87, 本文にて「1972年には沖縄返還が実現し、戦後の懸案はかなり解決されてきたが、北方領土問題や尖閣諸島(釣魚島)や竹島(独島)の領有権問題、朝鮮民主主義共和国との国交回復問題など未解決の問題もある」と記す。

 

2.実教出版株式会社 「高校 政治・経済」2007.3月検定、2008.1月発行。記述なし。

2.同上「新版 政治・経済」2006.3月検定、2008.1月発行。記述なし。

2’’.同上「政治・経済」2002.3月検定、2008.1月発行。記述なし。

 

3.株式会社 三省堂 「政治・経済」2003.3月検定。20083月第5版発行。

 P55,地図「日本にかかわる領土問題」にて「竹島」を記述し、説明文に「竹島 韓国と係争」と記す。日本領と明記されていない。

 

4.教育出版株式会社 「政治・経済」2003.3月検定、2008.1月発行。

記述なし。

 

5.株式会社 清水書院 「高等学校 現代政治・経済 改訂版」2007.3月検定、

2008.2月発行。

 P89,欄外の注にて「このほかの領土をめぐる問題として、島根県にある竹島について韓国が、沖縄県に属する尖閣諸島については中国などが、それぞれ自国の領土だと主張している」と記す。

5.同上「高等学校 新政治・経済 改訂版」2006.3検定[5]2008.2月再版発行。

 P80,本文にて「また、沖縄県にある尖閣諸島(魚釣島など)や島根県に属する
については、中国や韓国もそれぞれ自国の領土だと主張している」と記す。

 

6.株式会社 山川出版社 「詳説 政治・経済」2006.3月検定、2008.3月発行。

 P85,地図「日本の領域」にて「竹島」を日本領と明記し、本文にて「また、尖閣諸島をめぐる日本と中国・台湾との関係、竹島をめぐる韓国との関係などそれらの帰属と漁業資源・海底資源の開発に関しても外交による解決が求められている」と記す。

6.同上「東学版 政治・経済」2003.3月検定、2008.3月発行。記述なし。

 竹島=独島の記述なし。

 

7.数研出版株式会社 「改訂版 高等学校 政治・経済」2006.3月検定、2008.1月発行。

 P88,欄外の注にて「固有の領土をめぐっては、ほかにも、韓国が竹島の領有を主張し、さらには、中国・台湾が尖閣諸島の領有を求めるという問題もおこっている」と記す。

7.同上「政治・経済」2003.3月検定、2008.1月発行。

 竹島=独島の記述なし。

 

8.一橋出版株式会社 「政治・経済」2003.3月検定、2008.1月発行。

記述なし。

 

9.株式会社第一学習社 「高等学校 改訂版 政治・経済」2006.3月検定、2008.2月発行。

 P74,地図「日本の位置」にて「竹島」を日本領と明記し、本文にて「また、韓国との間に竹島の帰属をめぐる対立、中国との間に尖閣諸島問題がある」と記す。

9.同上「高等学校 改訂版 新政治・経済」2007.3月検定、2008.2月発行。

 P47,地図「日本の領土」にて「竹島」を日本領と明記し、本文にて「日本国内においても、ロシアとの間に北方領土問題、韓国との間には竹島問題がある」と記す。

 

10.株式会社 桐原書店 「新政治経済 改訂版」2006.3月検定、2008.2月発行。

 P82   本文にて「日本の領土に関しても、ロシアとの北方領土返還問題が未解決なほか、韓国が竹島の領有権を、中国が尖閣諸島の領有権をそれぞれ主張している」と記す。

 

 

 

日本史A

 日本史A67冊が発刊されているが、竹島=独島を日本領として明確に記述したのは清水書院の教科書1冊のみである。他は竹島=独島を記載しないか、あるいはその所属を明示していない。また、サンフランシスコ講和条約による日本領土を示した地図を山川出版と第一学習社が掲載しているが、その中で竹島=独島は「竹島」として記載されたものの、竹島=独島周辺のみ国境線が引かれず、どこの国の所属か明確に示されなかった。これは、サンフランシスコ条約によって竹島=独島が一切記載されなかった史実を反映していると思われる。

 

 

 

「日本史A」

2単位

 

2008年度教科書

 

順位

社名

教科書名

検定
年月

採択
冊数

占有率
(%)

竹島=

独島

日本領

日本領
冊数比率(%)

1

第一学習

高等学校 改訂版 日本史A

2007.3

85,400

20.7

0

2

山川出版

日本史A 改訂版

2007.3

72,633

17.6

0

3

山川出版

現代の日本史 改訂版

2006.3

70,339

17.1

0

4

東京書籍

日本史A

2007.3

69,016

16.7

0

5

実教出版

高校 日本史A 改訂版

2006.3

60,027

14.6

0

6

清水書院

高等学校 日本史A 改訂版

2006.3

38,311

9.3

9.3

7

三省堂

日本史A 改訂版

2007.3

16,606

4

0

 

合計

 

 

412,332

100

 

9.3

 

占有率

1.山川(35%)2.第一(21%)3.東書(17%)

 

 

 

 

 

 

1種類/7,日本領

 

 

 

 

 

 

 

冊数比率:9%

 

 

 

 

 

 

1.東京書籍株式会社 「日本史A2007.3月検定、2008.2月発行

記述なし。

 

2.実教出版株式会社 「高校日本史A 新訂版」2006.3月検定、2008.1月発行

P171、日韓条約の補足説明として「なお、日韓双方が領有権を主張している竹島(韓国名は独島)の帰属は、決定されなかった」と記述した。所属は不明確である。

3.株式会社 三省堂 「日本史A 改訂版」2007.3月検定、2008.3月発行

記述なし。

4.株式会社 清水書院 「高等学校 日本史A 改訂版」2006.3検定、2008.2月発行

 P1931998年日韓共同宣言の補足説明として「日本の固有領土である竹島・尖閣諸島についても、韓国は竹島の領有を主張しており、中国は尖閣諸島の領有を主張し、東シナ海における資源開発などについても問題が発生している」と記述した。

 最終頁「日本の世界遺産」の日本地図において、竹島を日本領として記述した。

 

5.株式会社 山川出版社 「日本史A 改訂版」2007.3月検定、2008.3月発行

記述なし。
5
. 同上 「現代の日本史 改訂版」2006.3月検定、2008.3月発行

 P149、地図「平和条約による日本の領土」に「竹島」の名前を記載するのみで、所属は不明確。

 

6.株式会社第一学習社 「高等学校 改訂版 日本史A2007.3月検定、2008.2月発行
 P141, 地図「サンフランシスコ平和条約による日本の領土」に「竹島」の名前を記載、所属は不明確。

 

 

 

日本史B

 日本史Bは7社、11冊が発刊されている。このうち、竹島=独島を日本領として明確に記述したのは明成社のみで、他は竹島=独島を記載しないか、あるいはその所属を明確にしていない。また、山川出版が3冊の教科書にサンフランシスコ講和条約に関連した日本地図で竹島=独島を「竹島」としてのせているが、上記の日本史Aと同様、所属は不明確である。

 

 

 

「日本史B」

4単位

 

2008年度教科書

 

順位

社名

教科書名

検定
年月

採択
冊数

占有率
(%)

竹島=

独島

日本領

日本領
冊数比率(%)

1

山川出版

詳説 日本史 改訂版

2006.3

318,416

58.9

0

2

東京書籍

新選 日本史B

2003.3

51,175

9.5

0

3

実教出版

高校 日本史B 新訂版

2007.3

34,899

6.5

0

4

実教出版

日本史B 新訂版

2007.3

30,358

5.6

0

5

山川出版

高校 日本史B 改訂版

2007.3

29,777

5.5

0

6

清水書院

高等学校 日本史B 改訂版

2007.3

24,062

4.5

0

7

三省堂

日本史B 改訂版

2007.3

15,190

2.8

0

8

桐原書店

新日本史B

2003.4

13,951

2.6

0

9

山川出版

新日本史 改訂版

2007.3

11,265

2.1

0

10

東京書籍

日本史B

2003.4

6,564

1.2

0

11

明成社

高等学校 最新日本史

2002.4

4,677

0.9

0.9

 

合計

 

 

540,334

100

 

0.9

占有率

1.山川(67%)2.実教(12%)3.東書(11%)

 

 

1種類/11,日本領

 

 

 

冊数比率:1%

 

 

 

1.東京書籍株式会社新選 日本史B2003.4月検定、2008.2月発行

 記述なし。

1. 同上 「日本史B2003.4月検定、2008.2月発行

記述なし。


2.
実教出版株式会社 「高校日本史B 新訂版」2007.3月検定、2008.1月発行

記述なし。
2
. 同上 「日本史B 新訂版」2007.3月検定、2008.1月発行

記述なし。

3.株式会社 三省堂 「日本史B 改訂版」2007.3月検定、2008.3月発行

P365、日韓条約の補足説明として「なかでも、賠償問題や、在日韓国人の法的地位、李承晩ラインと漁業権問題、領土(竹島。韓国名は独島)問題などで難航していた」と記述した。所属は不明確。

4.株式会社 清水書院 「高等学校 日本史B 改訂版」2007.3月検定、2008.5月発行
記述なし。

 

5.株式会社 山川出版社 「高校 日本史 改訂版」2007.3月検定、2008.3月発行

 P281、地図「平和条約の規定による日本領土」に「竹島」の名前を記載するのみで、所属は不明確。

5. 同上 「新日本史 改訂版」2007.3月検定、2008.3月発行

 P375、地図「平和条約の規定による日本領土」に「竹島」の名前を記載するのみで、所属は不明確。

5’’.同上 「詳説 日本史 改訂版」2006.3月検定、2008.3月発行

 P360、地図「平和条約の規定による日本領土」に「竹島」の名前を記載するのみで、所属は不明確。

 

6.株式会社 桐原書店 「新日本史B2003.4月検定、2008.2月発行

記述なし。

 

7.株式会社 明成社 「高等学校 最新日本史」2002.4月検定、2008.3月発行

 P270、本文にて「北方領土はロシアに占領され、島根県の竹島は韓国に不法占拠されている」と記述した。

 


3.結論

 

  以上の結果を集計すると次の表やグラフのようになる。

教科

日本領の冊数比(%)

日本領、種類数/全体

種類の割合(%)

地図

100

8 / 8

100

地理A

98.6

7 / 8

88

地理B

95

5 / 8

62.5

現代社会

68.8

8 / 17

47

政治経済

63.7

8 / 17

47

世界史B

11

1 / 12

8

世界史A

0

0 / 13

0

日本史B

9.3

1 / 11

9.3

日本史A

0.9

1 / 7

14

(合計)

 

39 / 101

 

 


 

 

以上



[1] 検定申請本は「日本には、ロシアとの間で北方領土問題があり、また、韓国との竹島領有をめぐるやりとりや、尖閣諸島をめぐる中国とのやりとりなどもある」と記した。

[2] 検定申請本は「尖閣諸島や竹島についても、周辺諸国との領土問題がある」と記したのに対して、検定意見「尖閣諸島及び竹島が我が国の領土であることが、理解しがたい表現」が付された。

[3] 検定申請本は前回検定(2002.3月)と同じ内容で「(竹島は)韓国との間で交渉中」と申請したところ、検定意見「我が国の領土であることが理解し難い」が付された。

[4] 検定申請本は2003年検定済の教科書同様に「1972年には沖縄返還が実現し、戦後の懸案はかなり解決されてきたが、北方領土問題や尖閣諸島(釣魚島)や竹島(独島)の領有権問題、朝鮮民主主義人民共和国との国交回復など未解決の問題もある」と書いたが、検定意見「尖閣諸島、竹島が我が国の領土であることが理解しがたい表現である」が付された。

[5] 検定申請本は「尖閣諸島(中国名は釣魚島)をめぐり日中双方が領有権を主張し、韓国とのあいだでは竹島帰属問題がある」と記した。