竹島=独島問題ネットニュース 32号
2013.5.9
竹島=独島問題研究ネット発行
http://www.kr-jp.net
<記事一覧>
1.【書籍】 竹内猛『竹島=独島問題「固有の領土」論の歴史的検討』後編
2.【論文】内藤正中「竹島一件と安龍福問題」『北東アジア文化研究』2013.3
3.【論文】朴炳渉「日露海戦と竹島=独島の軍事的価値」『北東アジア文化研究』
4.【論考】玉田大「竹島提訴の裁判学」『書斎の窓』2013.3
5.【論考】木村幹「そもそも“竹島”の争点って何だ」『社会科教育』2013.1
6.【論考】安天「獨島から見える韓国」『genron etc.』6号、2013.1
7.【論考】朴裕河「冷戦と独島(竹島)体制」『atプラス』14号、2012.11
8.【論文】朴裕河「和解のために」(再録)『atプラス』14号、2012.11
9.【報告】「竹島をめぐる領有問題で徹底討論」『レコンキスタ』2013.2
16.【情報】「韓国、竹島及び慰安婦問題関連予算の大幅増額」
17.【報道】 51〜65年日韓正常化交渉 日本、竹島問題後回し 墨塗り外し文書開示
19.【報道】 1877年の日本政府指令 「独島は日本領土ではない」
<記事詳細>
1.【書籍】 竹内猛『竹島=独島問題「固有の領土」論の歴史的検討』後編
後編は「第二次世界大戦後の展開」。各章の目次は、#8竹島=独島の日本からの分離、#9日本の平和条約研究と領土問題調書、#10「冷戦」と対日占領政策の転換、#11米国草案における「竹島」、#12ダレスとサンフランシスコ平和条約、#13サンフランシスコ平和条約と領土問題の発生。
(PW必要)http://www.kr-jp.net/ronbun/ron_cl_list/takeuchi.html
【コメント】自費出版。発売は期間限定(2-3か月?)で松江市の今井書店(TEL 0852-20-8811)にて840円。 https://www1.imaibooks.co.jp/index1.html
2.【論文】内藤正中「竹島一件と安龍福問題」『北東アジア文化研究』2013.3
大谷・村川両家の竹島(欝陵島)渡海事業を支援ないしは利用していた鳥取藩は1693年の安龍福拉致事件を機に一転して事業に冷淡になった。宋炳基『欝陵島・独島(竹島)歴史研究』(新幹社)は、これは鳥取藩が海禁下での竹島渡海事業の危うさを安龍福から教えられた結果であると指摘したが、それを本稿で検証する。また、1696年の安龍福渡日の目的や、彼に対する鳥取藩の処遇問題など、池内敏説との争点を解明する。なお、本稿の完成は昨年9月であり、著者の遺稿となった。
http://www.kr-jp.net/ronbun/naitou/naito-1303.pdf
3.【論文】朴炳渉「日露海戦と竹島=独島の軍事的価値」『北東アジア文化研究』2013.3
日露海戦は旅順艦隊やバルチック艦隊との海戦だけではなく、日本の沿岸で多くの輸送船を撃沈したウラジオ艦隊との熾烈な海戦があった。その一環で日本海軍は日本海=東海における敵艦監視体制を強化し、欝陵島や竹島=独島にも望楼を立てて海底電線を敷設した。その過程で日本政府は朝鮮領と認識していた竹島=独島を領土編入した。
http://www.kr-jp.net/ronbun/park/park-1303.pdf
4.【論考】 玉田大「竹島提訴の裁判学」『書斎の窓』2013.3
国際司法裁判所へ提訴するメリットは、(1)宣伝効果。ただし、相手が応じなければ総件名簿に記載されず、訴状も公開されないので宣伝効果は薄い。新聞各紙は、応訴を拒否すれば韓国側に「説明責任」があると報じたが、そのような「法的義務」はない。(2)相手が応訴する可能性が少しはある。(3)提訴は韓国の世論を喚起するので、合法な嫌がらせの手段となり得る。
デメリットは、(1)訴状で手の内をさらすことになる一方、相手は応訴する場合、戦術やタイミングを熟慮可能。(2)日本は「捕鯨」で防戦中であり、「竹島」との両面作戦は荷が重い。(3)北方領土も提訴の声が出てくるし、尖閣で提訴されれば攻守逆転。
裁判の場合、(1)日本の勝訴が広く信じられているが、敗訴の可能性もある。(2)不服申し立てはほとんど認められず、裁判は一審で終結する。(3)いずれが勝訴しても、敗訴側が国内世論を説得するのは困難。(4)判決の強制執行制度はあるが、強制執行の先例はない。(5)裁判後に紛争(特に領域紛争)が再燃することも多い。以上のように、手続法の観点から見た場合、難点も多く、提訴だけでメリットを見出すのは困難。
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/msc_ron_cl/tamada1303.pdf
【コメント】北方領土をデメリットにあげたのは、「外務省は千島列島の地理的範囲を<南千島である国後・択捉両島と、それ以北の北千島とを合わせたもの>と認識」して地図などを作成したので(竹内猛、前掲書、44頁)、裁判で日本はサンフランシスコ条約にて両島を放棄したと認定される可能性が高いためである。
竹島=独島問題は、1960年前後なら日本の勝訴はほぼ間違いなかったが、学問の進展につれ日本は次第に不利になりつつある。その延長線上で韓国がいつか応訴あるいは逆提訴する可能性もあろう。
5.【論考】 木村幹「そもそも“竹島”の争点って何だ」『社会科教育』2013.1
日本はなぜに1905年という時期に竹島を編入することができたのか。それはこの時点では誰もこの島を「実効支配」していなかったからだ、というのが日本側の言い分である・・・ もっとも、現在の観点では、この主張は少し無理なものにも見えるかも知れない。なぜなら、1905年以前にも実際に現在の竹島を訪れた日本人や韓国人は多くいるからである。しかしながら、ここで鍵になるのは「実効支配」という言葉である・・・問題は、その島をどちらの住民あるいは政府が、実際に支配していたか、なのである。
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/msc_ron_cl/kimura-1301.pdf
【コメント】 実効支配を語るなら、1900年大韓帝国勅令41号を避けて論じることはできない。勅令にて欝島郡の管轄区域が欝陵全島・竹島(竹嶼)・石島とされたが、日本でも多くの研究者はこの石島が竹島=独島であると見ている。木村はこれには一言もふれず、隔靴掻痒の感がある。
6.【論考】 安天「獨島から見える韓国」『genron etc.』6号、2013.1
李大統領(の獨島訪問)は、この(「解決しないことをもって解決とする」)暗黙の了解にヒビを入れた。韓国が今までのゲームのルールにはもう従わなくなった、ということだろうか? 多分、そうではない。獨島訪問は緻密な計画のもとで行われたものというよりは、内政的困難において局面打開を狙った突発的な行動である可能性が高いからだ。したがって、韓国はこれ以上ことを大きくせず、「獨島をめぐる領土問題は存在しない」の一点張りを今後貫くだろう。これは日本が「尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しない」の一点張りを貫くのと同じ論理構造である。実効支配している側は今のままで問題ない、という態度を維持するのが一番無難なのだ。だから、僕は思う。大統領は獨島に行かないほうがよかったのだ。
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/media/z-2013/anCH-1301.pdf
7.【論考】朴裕河「冷戦と独島(竹島)体制」『atプラス』14号、2012.11
(独島問題の)平和的解決を目指すなら、「法」や「研究」に頼るよりは「対話」に力を注ぐほうがずっと効果的ではないだろうか。お互い「独島体制」が続き得た背景を理解し、日韓それぞれの「島の日」を破棄し、その日をむしろ当該地域の子どもたちの交流の日にしたほうがずっと生産的だ。
(和解の土台を作るには)古文書に依存して「今、ここ」を決めるようなおろかな拘束から自由になることだ。「過去」をもとに現在を考えるのではなく「未来」に向けて現在を作っていくことでもある。
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/media/z-2012/parkYH1211.pdf
【コメント】本稿では、日本で注目された朴裕河の持論「独島を日韓両国の共同領域に」という主張がまったく見られない。これは、大阪市長橋下徹の主張「日韓による竹島の共同管理」がきわめて不評だったので、その影響を受けたのかも知れない。
また、彼女は下記の『和解のために』(2006)では「韓日両国はたんに自国の漁民の利益のためではなく、過去の清算をもう一度おこなうとの意識をもって、この(独島)問題に真摯に取り組む必要がある」と述べたが、今回、歴史研究にもとづく「今、ここ」論を愚かと記し、主張を大きく変えたのが注目される。
8.【論文】朴裕河「和解のために」(再録)『atプラス』14号、2012.11
本稿は、朴裕河『和解のために』(初版2006)第4章「独島」を再録したものであるが、編集部は「この論文は、今こそ再読されるべきものと考え」掲載した。
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/msc_ron_cl/parkYH1211wakai.pdf
【コメント】日本で『和解のために』は高く評価されてまたも再録されたが、同書の「独島」論は下記に指摘したように、日本側と韓国側の主張を取り違えたり、太政官が日本に無関係とした「竹島外一島」を日本側主張では「欝陵島と竹嶼」と見ていると誤解するなど重大な事実誤認が多い。今回の再録ではわずかに「伯耆藩」が「鳥取藩」に訂正されたが、他は依然として訂正されていない。また、変説の多い下條正男説を「日本側主張」の代表と見るのも間違いである。
批判は、朴炳渉「報告「竹島=独島は固有領土か、強奪領土か」への質問と回答」『プランB』20号、2009、p.42
http://www.kr-jp.net/ronbun/park/park-0904.pdf
9.【報告】「竹島をめぐる領有問題で徹底討論」『レコンキスタ』2013.2
一月十二日、都内のイベント施設「スペースたんぽぽ」にて、『東アジアに平和の海をつくる Vol.1〜竹島/独島問題を手掛かりに』と題するシンポジウムが開かれた。前田朗東京造形大学教授が代表を務める「平和カフォーラム」が主催したものだ。パネリストは、在日朝鮮社会科学者協会の康煕奉氏、竹島=独島問題研究ネットの朴炳渉氏、そして弊会の木村三浩代表の三名である。白熱した討論は竹島のみならず我が国の過去の植民地問題にまで及び、一般の来場者も交えて極めて活発な、質の高い議論が交わされた
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/media/z-2013/hurusawa-1302.pdf
(Uチューブ動画)http://www.youtube.com/watch?v=XfKO987M1hs#_parent
10.【研究会】 第286回 朝鮮近現代史研究会
2013年2月10日(日)午後1時〜5時
(1)「竹島=独島領有問題を考える-上陸失敗紀行と研究の現段階」坂本悠一
(2)「金九の思想と行動〜解放後を中心に〜」李景〓
*会場:神戸市立中央図書館内、青丘文庫 TEL 078-371-3351
11.【研究会】独島・竹島問題の起源と争点
主催 中央大学社会科学研究所「平和学の再構築」研究チーム
日時 2012年12月7日(金)16:00〜
場所 中央大学多摩キャンパス2号館4階研究所会議室1
講師 玄 大松氏 (韓国 国民大学日本学研究所研究教授)
12.【集会】「竹島の日を考え直す会:発足の集い」
2013年4月22日(月)午後6時
場所:大阪西成区民センター
講演1:「『竹島の日』と高校教科書検定を批判する」黒田伊彦
講演2:「竹島=独島は、領土問題ではなく歴史問題である」久保井規夫
http://www.kr-jp.net/sympo/s-2013/130422-hossoku.pdf
(韓国語)http://www.ytn.co.kr/_ln/0104_201304231904440861_004
【講演会】「竹島の日」を考え直す集い
2013年2月15日(金)午後6時〜9時
場所:大阪西成区民センター、2-1号室
講演1.「在日一爺の竹島に対する義憤」“竹島の日”を考え直す会代表 尹濚夏
講演2.「竹島問題に関して」門真市議会議員 戸田ひさよし
講演3.「独島(竹島)問題の解明〜地図を分析して」桃山学院大学講師 久保井規夫
講演4.「領土ナショナリズムと天皇制」元大阪松蔭女子大学講師 黒田伊彦
講演5.「竹島問題に思うこと」元大阪経済大学教授 永野仁
主催:“竹島の日”を考え直す会
http://www.kr-jp.net/sympo/s-2013/130215-kangae.pdf
【コメント】講演会にて尹濚夏代表の島根県知事宛「竹島に関する質問書」ならびに島根県総務課長の回答書が公開された。回答書では杉原見解を想定してか、太政官のいう「竹島外一島」は欝陵島の可能性が大であると記したが、これは島根県『竹島 かえれ島と海』(2006)の見解に反する。
13.【島根県】 第8回「竹島の日」記念行事
日時:2013年2月22日(金)
場所:島根県民会館中ホール
講演:黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在特別記者・論説委員
「竹島問題で韓国社会はどう動く」
対談:黒田勝弘氏・下條正男氏(拓殖大学国際学部教授)
主催:島根県、島根県議会、竹島・北方領土返還要求運動島根県民会議
【関連記事】岩瀬朗「竹島の日、現地レポート」『WILL』2013.5.
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/media/z-2013/iwase-1305.pdf
14.【講演会】 竹島=独島問題研究の最前線
日時:2013年2月24日
講師:朴 炳渉(竹島=独島問題研究ネット代表)
場所:さいたま市鈴谷公民館
主催:ブリッジ・コリアジャパン
15.【学習会】近現代の日本の戦争と「領土問題」
日時:2013年2月22日
講師:山田朗
場所:東京・文京シビックセンター
主催:映画人九条の会
http://www.kr-jp.net/sympo/s-2013/130222-yamada.pdf
16.【情報】「韓国、竹島及び慰安婦問題関連予算の大幅増額」
『外国の立法』国会図書館、2013.2
予算決算特別委員会の審査では「領土予算」は当初政府案から3億ウォンの追加増額が認められ(内訳不明)、57億6千万ウォン(2012年度比約1.7倍)が最終的に2013年度予算として成立した。
(PW必要)http://www.kr-jp.net/member/media/z-2013/kikuchi-1302.pdf
17.【報道】 51〜65年日韓正常化交渉 日本、竹島問題後回し 墨塗り外し文書開示
東京新聞、 2013年2月19日
外務省が、一九五一〜六五年に行われた日韓国交正常化交渉をめぐる外交文書について、従来墨塗りをしていた部分も公開し、市民団体の「日韓会談文書・全面公開を求める会」に開示したことが分かった。島根県・竹島(韓国名・独島)をめぐる日本政府の立場や、韓国に対する戦後処理の算定根拠に関する記述も含まれており、日韓関係の研究に影響を与えそうだ。
新たに公開された部分には、竹島に関し「日本海の孤島で、アシカの数が減少した現在、経済的にはあまり大きな意義を有しないとみられる」との日本外務省の見解を示す記述があった。日韓国交正常化を優先するため、竹島問題を後回しにした政府の姿勢が分かる。
【コメント】 依然として竹島=独島関係文書はほとんど非公開である。詳細は
「求める会」HP http://www.f8.wx301.smilestart.ne.jp/
今回、公開された竹島=独島の経済価値については下記参照。
朴炳渉「竹島=独島漁業の歴史と誤解(2)」『北東アジア文化研究』2011
http://www.kr-jp.net/ronbun/park/parkBS-1110.pdf
18.【TV】 「独島は朝鮮領」表記、日本歴史地図を発見
YTNニュース、2013.3.1
独島を朝鮮領と記した過去の日本政府の検定を通過した歴史地図をYTNが単独で取材しました。露日戦争当時、独島付近でおこなわれたロシアバルチック艦隊と日本海軍との最後の海戦図が載った1931年発刊の日本中・高校用歴史地図帳です。
(韓国語動画) http://www.ytn.co.kr/_ln/0104_201303010850302563
【コメント】地図帳とは芝葛盛『新編日本歴史地図』(明治書院、1931)であり、その「日本海海戦図」に「竹島(リアンコルド島)」と表記され、索引では竹島(朝鮮)と記された。地図帳はリアンコルド島(竹島=独島)を朝鮮付属と見たのである。
一方、YTNと同系列の聯合ニュース(2013.2.27)は、芝葛盛『日本歴史地図』1924年版を紹介し、それを「中等学校教科書」と紹介したが、これは誤りである。同書が「文部省検定済」になったのは1931年である。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2013/02/27/0200000000AJP20130227001600882.HTML
19.【報道】 1877年の日本政府指令 「独島は日本領土ではない」
聯合ニュース 2013/02/25
「日本政府が独島を『竹島』と称し、領有権を主張しているが、これは独島を再占領しようと策動する行為だ」――。
日本政府が独島の領有権主張を強めている中、歴史学者で中国・海南島に強制徴用された朝鮮人虐殺事件を研究する「海南島近現代史研究会」会長の佐藤正人氏は「独島問題は領有権の問題ではなく、植民地問題」と分析した。日本政府が独島を竹島を称し、歴史的・国際法的に明白な日本固有の領土と主張しているのは、独島の再占領を企む行為だと批判した。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/society/2013/02/25/0800000000AJP20130225003000882.HTML
以上
○ 竹島=独島問題ネットニュースのバックナンバーは下記で見られます。